建設業の勤怠管理 — 直行直帰の現場をどう記録するか
建設業の勤怠が難しいのは、人数の問題ではなく「会社にいない」ことです。現場に直行して現場から直帰する働き方では、事務所の出退勤簿は実態を写しません。ここでは、記録が崩れる場面を特定してから、打刻の方法と運用ルールを決める順番を整理します。
現場で記録が崩れる場面
まず、いまの記録がどこで実態からずれているかを見てください。建設業では次の場面が定番です。
- 直行した日の始業が、現場到着時刻ではなく事務所の定時で記録されている
- 資材を積んでから現場へ向かう移動が、どこにも計上されていない
- 一日に複数の現場を回った日が、一本の勤務としてしか残っていない
- 雨で中断した時間の扱いが、人によって違う
- 応援で入った職人の記録が、手書きのメモにしか存在しない
厚生労働省のガイドラインでは、労働時間の把握は使用者の責任とされ、原則として客観的な記録によることが求められています。自己申告に頼る形は例外的な扱いです。詳しい考え方は記事末尾の公式ページで確認してください。
打刻の方法をどう選ぶか
建設業で現実的な選択肢は多くありません。現場で完結することが最優先です。事務所の端末でしか打刻できない仕組みは、直行直帰の日に必ず飛ばされます。
スマホ打刻にするとき
位置情報を使うかどうかで、社内の受け止めが変わります。監視されていると感じさせないために、何のために取得するのか、どこまで見えるのかを先に説明してください。説明を省いた導入は、たいてい形骸化します。
通信が届かない現場がある場合
山間部や地下では通信が不安定です。オフラインで打刻して、電波が戻ったときに送信する仕組みがあるかを確認してください。導入前に、実際に電波の弱い現場で試させてもらうのが確実です。
決める順番
製品を先に選ぶと、決めていない運用に製品の仕様を合わせることになります。順番を逆にしてください。
職人に受け入れられるかで決まる
建設の現場で新しい仕組みが定着するかどうかは、機能ではなく、毎朝の一手間をどう受け止められるかで決まります。手が汚れている、寒くて手袋を外したくない、そもそも画面の操作に慣れていない。この三つは実際によく出てきます。
だから、打刻の操作は一つの動作で終わる形にしてください。開いて選んで確認して、という手順が三つ以上あると、朝の慌ただしい時間には飛ばされます。飛ばされた打刻は、あとから誰かが埋めることになります。
導入の前に、いちばん抵抗しそうな職人に先に試してもらうのが確実です。その人が使えるなら他の人も使えます。逆に、事務所の中で操作を確認しただけで全体に広げると、現場の条件で詰まったときに引き返せなくなります。
元請けから求められる書類とつなげる
公共の工事や大手の元請けが絡む現場では、作業員の名簿や就業の記録を求められることがあります。求められてから作ると、その都度、手元の記録を並べ直すことになります。
どの形式で求められるかは元請けによって違うので、いま提出しているものを一度並べて、そこに必要な項目が日ごろの記録に入っているかを確認してください。足りない項目があれば、打刻の時点で取るようにします。あとから足すことはできません。
現場別の集計をあとから作ることはできない
打刻時に現場を選ばせていなければ、あとから現場別の労務費を出すことはできません。原価管理まで見据えるなら、この項目は最初から必須にしておく必要があります。使わないかもしれない情報でも、取っていないものは復元できないと考えてください。
逆に、原価を現場別に見る予定がないなら、入力項目を増やすほど打刻は面倒になります。現場の人が毎日触るものなので、必要のない項目は削ってください。
時間外の上限は現場ごとではなく人ごとに見る
建設業では、一人の職人が複数の現場を行き来します。現場ごとに記録を分けていると、その人の合計の労働時間が見えなくなります。上限に関する判断は人ごとに行うものなので、現場別の集計とは別に、人ごとの合計を出せる形が必要です。
月の途中で状況を把握できるかどうかも見てください。締めたあとに超過が分かっても、そのときには打つ手がありません。途中で見えていれば、配置を変える判断ができます。考え方の詳細は記事末尾のガイドラインと条文で確認してください。
常用と応援をどう記録するか
その日だけ入る人の記録は、後回しにされがちです。人数が少なければ手書きのメモで済ませてしまい、そのメモが残らない。あとから労働時間の記録として求められたときに、出せるのは自社の社員の分だけという状態になります。
自社が雇用している人か、他社から来ている人か、一人親方として請け負っている人か。立場によって記録の必要性も扱いも変わります。まず自社の現場に来ている人がそれぞれどの立場なのかを整理してください。整理しないまま同じ仕組みに全員を入れると、記録が実態と食い違います。
雨で流れた日の扱いを決めておく
天候で作業ができない日は、建設業では避けられません。現場に着いてから中止が決まった場合と、前日に決まった場合とでは扱いが変わります。ここを決めていない会社は多く、そのつど人によって違う処理をしています。
先に方針を決めて、職人にも伝えておいてください。伝えていないと、中止の連絡を受けた人が「今日は打刻するのか」を毎回迷います。迷いが出る運用は記録が揃わず、記録が揃わない月は集計もやり直しになります。
紙の出面帳をいつやめるか
多くの会社が、仕組みを入れたあとも出面帳を並行して付け続けます。心配だからですが、二つ付けている限り、どちらも中途半端になります。片方が正で片方が控えという関係になっていないと、食い違ったときにどちらを信じるかで揉めます。
期間を決めて並行させ、その期間が終わったら紙をやめると先に宣言してください。並行のあいだに集計が一致することを確認すれば、やめる判断はできます。期限を切らずに始めると、何年でも二重のまま続きます。
一次ソース(公式ページ)
制度・料金は改定されます。本記事は執筆時点の情報です。最新情報は必ず上記の公式ページでご確認ください。
よくある質問
直行直帰の日の移動時間は労働時間ですか
会社の指示で資材を積んで向かうなど、拘束の程度によって扱いが変わります。判断が分かれる典型なので、自社の運用を決める前に記事末尾のガイドラインを確認してください。
現場にネットがなくても打刻できますか
通信が届かない場所では、オフラインで打刻して復帰時に送信する仕組みが必要です。導入前に、実際に電波の弱い現場で試させてもらうのが確実です。
職人ごとに現場が変わる場合、集計はどう分けますか
打刻時に現場を選ばせる方式が一般的です。あとから現場別の原価に振り分けたいなら、この項目を必須にしておかないと後で分解できません。