美容室の会計 — 現金売上とスタッフ歩合の記録をそろえる
美容室の帳簿が合わなくなる原因は、記帳の知識ではなくレジの締めと帳簿の間に段差があることです。日々の記録の単位を先にそろえてしまえば、月末の作業はほとんど確認だけになります。
日々の記録でそろえる単位
まず、1日の流れの中でどこまでを当日に済ませるかを決めます。ここが曖昧なまま会計ソフトを入れても、入力する材料が整っていないので手間は減りません。
現金のずれは、日をまたぐと追えなくなる
現金商売でずれが出るのは珍しくありません。問題は、ずれたことではなくいつずれたか分からなくなることです。日次で実際の現金を数えていれば、ずれた日を特定して原因を確認できます。月末にまとめて数えると、1か月のどこかとしか分かりません。
釣銭の準備金と売上を混ぜないことも大切です。準備金は毎日同じ額を残す運用にして、その分を差し引いた金額を売上として扱うと、数えた結果が意味を持つようになります。
記録の設計で決めること
次の区分は、あとから分解できません。取っていない情報は復元できないので、記録を始める前に決めてください。
キャッシュレスは入金の日がずれる
カードや電子マネーの売上は、施術した日と入金される日が違います。ここを同じ日として扱うと、通帳の残高と帳簿が合わなくなります。売上は施術の日に立て、入金はあとから消し込む形にしてください。
面倒に感じるかもしれませんが、この形にしておくと「まだ入金されていない売上がいくらあるか」が見えます。決済の会社ごとに入金の周期が違うので、複数を使っている店ほど、把握していないと資金の動きが読めません。
手数料の扱いも決めておきます。差し引かれた金額だけを記録すると、売上そのものが実際より小さく見え、客単価の把握が狂います。売上は総額で立てて、手数料は費用として別に記録してください。
回数券・プリペイドは売った日の売上ではない
先にお金を受け取っていても、施術を提供していない段階では売上として確定していません。受け取った時点では預かりとして記録し、使われた分だけを売上に振り替えます。ここを売上として計上してしまうと、利益が実態より前倒しで大きく見えます。
運用としては、回数券の残りを店側で把握できる状態にしておく必要があります。紙の台紙だけで管理していると、帳簿側の残高と突き合わせる手段がありません。
歩合を出すなら、誰の売上かを記録する
スタッフごとの歩合を計算するには、施術の売上が誰のものかという情報が要ります。これは会計ソフトの機能ではなく、レジや予約の側で持つ情報です。あとから月末にまとめて振り分けようとすると、記憶に頼ることになります。
なお、歩合の支給そのものは給与の処理です。会計ソフトでやるのは、その計算に使える形で売上を記録しておくところまでだと考えてください。
店販は在庫を持つ商売だと考える
店販の商品には仕入れがあり、売れ残れば在庫として残ります。サービスの売上と同じ勘定に入れてしまうと、粗利の構造が見えなくなります。売れ行きの悪い商品を仕入れ続けていることに気づけるかどうかは、この区分にかかっています。
材料の在庫を数える日を決める
薬剤やカラー剤は、仕入れた時点では費用ですが、使い切っていない分は在庫として残っています。決算のときに数えていないと、その年の利益が実態からずれます。
とはいえ、毎日数える必要はありません。決算の日と、できれば月末に一度、主要なものだけを数える運用にしてください。全部を数えようとすると続かず、続かない仕組みは一年でやめることになります。数える対象を絞って、続けられる形にするほうが結果的に正確です。
個人の支出と店の支出を分ける
一人で経営している店では、私物の買い物と店の仕入れが同じカードで混ざりがちです。混ざると、帳簿を作るたびに一件ずつ仕分ける作業が発生します。この作業は毎月発生し、しかも記憶が薄れるほど時間がかかります。
解決は簡単で、店用のカードと口座を分けるだけです。分けた瞬間から、明細をそのまま取り込めるようになります。これまで一件ずつ判断していた時間がまるごと消えるので、会計ソフトを入れるより先にやる価値があります。
数字を月に一度は見る習慣にする
記帳を確定申告の直前にまとめてやると、一年分の数字が出るのはすべてが終わったあとです。それでは経営の判断には使えません。値上げをするかどうか、スタッフを増やすかどうかは、途中の数字を見て決めるものです。
月に一度、締めた数字を見る時間を決めてください。見るのは三つで足ります。サービスと店販それぞれの売上、材料と人件費、そして手元の現金です。前の月と比べて動いたところがあれば、その理由を思い出せるうちに確認します。時間が経つと、数字だけが残って理由が失われます。
税理士に頼むかどうかの分かれ目
売上の規模だけで決まる話ではありません。判断の材料になるのは、記帳に使っている時間と、その時間を施術に回した場合にどれだけ売上が動くかです。予約が埋まっている店ほど、自分で記帳する時間の機会費用は大きくなります。
頼む場合でも、日々の記録は自分の側に残ります。レジの締めと現金の確認は代わってもらえません。丸ごと預けられると考えていると、思っていた形にならないことがあります。どこまでを自分でやるのかを、契約する前に具体的に確認してください。
予約システムと会計は無理につながなくてよい
予約や顧客管理の仕組みと会計を連携させたくなりますが、必須ではありません。連携すると設定を維持する手間が生まれ、どちらかを変えるたびに両方を確認することになります。
先に決めるべきは、レジの締めの数字を毎日どこかに一度だけ記録する、という一本の流れを作ることです。それが安定してから、その入力を自動にできないかを考えます。順番を逆にすると、自動で流れてきた数字が正しいかどうかを確かめる手段がない状態になります。
一次ソース(公式ページ)
制度・料金は改定されます。本記事は執筆時点の情報です。最新情報は必ず上記の公式ページでご確認ください。
よくある質問
レジの数字と帳簿が毎月ずれます
ずれの原因は、締めのタイミングと記録の単位が一致していないことがほとんどです。日次で締めて日次で記録する形にそろえると、ずれた日を特定できるようになります。月末にまとめて入れる形だと、どの日のずれかが分かりません。
店販とサービスは分けて記録すべきですか
分けてください。原価の有無がまったく違うため、混ぜると利益の見え方が実態からずれます。あとから分けることはできないので、最初から分けて記録します。
歩合の計算は会計ソフトでできますか
歩合は給与計算の領域で、会計ソフトの本体機能ではありません。売上の記録を歩合の計算に使える形で残しておくことが、会計側でできることです。